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DIPG-2023

びまん性内在性橋グリオーマ(DIPG)のレジストリ構築および
緩和ケアの実態解明を目的とした多施設共同前方視的観察研究

Prospective Multicenter Study of Diffuse Intrinsic Pontine Glioma:
Construction of the Registry and Survey on Palliative Care
(DIPG-2023)

研究を行うに至った背景

小児脳腫瘍は、小児がんの中で白血病に次いで頻度が高い疾患です。中でも、脳幹部に発生するDIPGは最も治療が困難な疾患の一つであり、新しい治療法の確立が急務となっています。

しかし、DIPGはその希少性ゆえに、新規治療を確立するための大規模な研究を実施することが難しいという課題があります。そのため、このような希少疾患の場合、ヒストリカルコントロール(過去のデータを対照群とする手法)を用いることで、今後期待される新しい治療法の有効性を証明する道が開かれます。

また、DIPGの治療において、患者さんが自宅で過ごす時間や環境は非常に重要です。しかし、これまで日本では、DIPGに対する在宅ケアや緩和ケアの診療についての情報共有が十分に行われてきませんでした。

一方、諸外国では既にDIPGのレジストリが実施されており、International DIPG/DMG Registryにはアメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドが参加しています。また、SIOPE DIPG Network(2011年設立)には、オーストリア、ベルギー、クロアチア、チェコ共和国、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイスランド、アイルランド、イタリア、リトアニア、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スロベニア、スペイン、スウェーデン、スイス、オランダ、イギリス、トルコ、ロシア、メキシコが参加しています。しかし、アジアには未だDIPGレジストリが存在していない状況です。

本レジストリの目的は、DIPGに関するレジストリシステムの構築(ヒストリカルコントロールの確立)と、DIPGに対する支持療法、在宅ケア診療、緩和ケア診療の実態調査を行うことです。

本研究では、新しい治療を受ける機会は提供されませんが、今後のDIPGの新規治療を目指した研究のためのコントロールデータとして、非常に重要な役割を果たします。

​研究の目的

​レジストリの構築

DIPGに関するリアルワールドデータを、支持緩和医療を含め、前方視的に収集し、DIPGレジストリの構築をすること。

​緩和・支持療法の実態解明

DIPGに対する緩和ケア診療の実態を明らかにする。

新規治療開発に際して、臨床試験の対照群データとして利用可能なレジストリを構築することで、今後のDIPGに対する治療開発の基盤となることが期待される。

DIPG患者に対する緩和ケア診療内容を、前向きに観察して実態を明らかにし、その最適化、標準化に向けた支持・緩和療法のマニュアルを作成する

研究の概要

​対象

​研究期間

目標症例数

主要評価項目

​副次評価項目

探索的評価項目

びまん性内在性橋グリオーマ(DIPG) (施設診断)

30歳未満の患者

登録期間2年間(2024/7/1-2026/6/30)、観察期間2年間 

60症例(2年間)

全生存期間(OS)

  1. 無増悪⽣存期間(PFS)

  2. PS 70以上を維持できた期間

  3. 治療内容別の有害事象内容、発現割合

  4. 神経学的所⾒の経時的変化

  5. 治療内容別の奏効率

  6. 年間症例登録数

  1. 画像診断所⾒

  2. 組織診断所⾒

  3. 初発時の臨床所⾒

  4. 初回治療内容

  5. 増悪時治療内容

  6. 緩和ケア治療内容

​主な評価項目

(C)⾝体所⾒ (初発時、初回治療効果判定時、2 か⽉毎の経過報告、増悪判定時、観察終了時)
[Performance Status] 16 歳以上︓Karnofsky Performance Status (KPS)︔ 16 歳未満︓Lansky
Play-Performance Scale (LPPS)(5.1 参照)
[神経学的所⾒・症状] 意識レベル (GCS; 5.2 参照)、神経学的所⾒・症状の有無と内容(脳神経障害、頭
痛、⿇痺、感覚障害、⼩脳症状、膀胱直腸障害など)

(D-1)抗腫瘍治療内容・効果判定(初回治療効果判定時)
[外科的介⼊] 有無、⼿術内容(⽣検、⽔頭症⼿術など)、⼿術⽇
[放射線療法] 線質、照射⽅法、線質、照射範囲・部位、線量、時期、合併症
[化学療法] 有無、内容、時期、合併症
[その他の治療] 有無、内容、時期、合併症
[治療効果判定] 画像効果判定、神経学的所⾒の変化、ステロイド・抗⾎管新⽣薬使⽤状況、総合効果判定、
初回治療時の⼊院⽇数

(E)支持療法・緩和ケア内容 (初回治療時/経過報告(2カ月毎)/増悪判定時/観察終了時)
[継続している抗腫瘍治療] 有無、内容
[頭痛、頭痛以外の疼痛、悪心・嘔吐、痙攣、不穏・せん妄、その他の症状] 症状の有無、治療の有無と内容、時期、効果
[ステロイド] 有無、使用目的、内容、時期、効果、合併症
[利尿薬] 有無、使用目的、内容、時期、効果
[輸液] 有無、投与経路(中心静脈カテーテル、ポート、PICCの有無)、内容、時期
[経管栄養] 有無、投与経路(胃瘻、経鼻胃管)、時期
[呼吸補助] 人工呼吸器使用の有無、時期、気管切開の有無、時期、中止の有無
[昇圧剤] 有無、内容、時期
[深い持続的な鎮静] 有無、時期
(F)転帰・終末期の療養環境等 (観察終了時)
[転帰] 転帰、確認日、復学・復職の有無
[症状の出現時期] 歩行、移動、嚥下、コミュニケーション、意識状態、呼吸障害等の出現時期、再出現時期
[告知] 患児への告知の有無・内容(病名、病態、予後等)、患児からの質問の有無(家族、医療者)
[積極的な治療を行わない判断をした人]
[死亡場所] 自宅、緩和ケア病室、一般病室、ICU
[死亡時の持続モニター装着] 有無
[家族とDNARの事前合意] 有無
[心肺停止時の蘇生術] 有無、内容(バッグ換気、気管挿管、胸骨圧迫、昇圧剤等の薬物)
[きょうだいとの時間(死亡場所が病院の場合)] 最期の一週間に一緒に過ごせたか
[利用した医療資源] 有無、内容(訪問診療、訪問看護、ショートステイ、こどもホスピス、メイク・ア・ウィッシュ等の慈善団体活動、その他)

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